試験登校で見えた「4時間の壁」――母のレスパイト、主治医とのすれ違いの先に

試験登校で見えた「4時間の壁」――母のレスパイト、主治医とのすれ違いの先に 不登校・分離不安
試験登校で見えた「4時間の壁」――母のレスパイト、主治医とのすれ違いの先に
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はじめに

いま、わが家は一つの大きな節目を迎えています。

現在、児童精神科に再入院して2か月。

8歳、児童精神科への再入院。医師に告げられた時、息子が放った言葉と私たちの決断。|やななと発達凸凹兄妹
「もう一度、入院しようか」 主治医のその言葉が診察室に響いたとき。 私の心に最初に浮かんだのは、絶望ではありませんでした。 不謹慎かもしれませんが、ほんのわずかな、でも確かな「安堵」だったのです。 こんにちは、やななです。 現在、夫と別居し...


8歳の息子は、地元の小学校への「試験登校」の真っ最中。

いまは1〜3時間目までの短い時間ですが、週2回教室に足を運び、授業をしっかりと受けることができています。

学校への準備を一緒にできるようになったり、時間を意識して動けるようになったりと、少し前までは想像もつかなかったような息子の成長に、頼もしさを感じる瞬間も増えてきました。

しかし、1歩前進したからこそ、新しく見えてきた高い壁もあります。

それが、息子のスタミナ的な限界である「4時間の壁」です。

現在の息子の様子や、院内学級の先生の見立て、そして「母である私が倒れないように」と私の就労やレスパイトを最優先に考えてくれる主治医の配慮。それぞれが我が子を思ってのことだと分かっているからこそ、目指すべき「目標設定」のズレに、いま私は大きな葛藤を抱えています。

今回は、試験登校を通じて見えてきた息子の限界と、親の心身の限界の狭間で揺れ動くわたし自身の本音について、整理しながら書いてみようと思います。

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「できた!」を自信に。ポイント制から始まった息子の自立と成長

ここ最近の息子の様子を見ていて、一番の大きな変化は「自分で行動をコントロールする力」が少しずつ、でも、確実についてきたということです。

そのきっかけになったのは、分かりやすい「ご褒美ポイント制」でした。 最初は「ポイントを貯めたら欲しい物が貰える!」という物欲からのスタート。でも、私はそれでいいと思っています。動機はどうあれ、まずは「自分から行動できた」という事実を作ることが大切だと思うからです。

現在、院内学級の先生とも共通の目標として掲げているのが、このポイントという物理的な報酬と反復横跳びをしながら、最終的には「自分でできた!」という内面的な『達成感』へ徐々にシフトしていくこと。

「自分でできる事は自分でやる」を徹底していくために、親だけでなく支援者である先生としっかり目線を合わせ、同じ方向を向いて関われるようになったのは、私にとってもすごく心強い出来事でした。

日常のあちこちに現れた「嬉しい変化」

その効果は、日々の生活のあちこちに現れています。

たとえば、今まで私が全部やってしまっていた学校の準備を、今では「一緒に」できるようになっています。時計がしっかり読めるようになったことも大きくて、息子自身が時間を意識して「今はこれをやる時間だ」と自分で動けるようになっている姿には、本当に驚かされました。

そして何より私が感心しているのが、「3回『やめて』と言われるまでに、必ずやめる」という約束を、息子が徹底して守ってくれていることです。

「もう2回目の『やめて』だよ」 そう声をかけると、不貞腐れた態度を見せながらも、絶対にそこでやめてくれるようになったのです。

自分の衝動に自分でブレーキをかけるのは、息子にとってすごくエネルギーが要ることだと思うのですが、それを自分の意志でやり遂げている。これは本当にすごい成長だと思います。

5歳の妹に対しても、時々わざと泣かせようとするような意地悪な言い方をすることがあるのですが、「わざとやってるよね、やめて。これは1回目ね。」と伝えれば、以前のようにヒートアップすることなく、すぐにやめられるようになりました。

「物がもらえるから」から始まった挑戦が、少しずつ「約束を守れた自分」「時計を見て動けた自分」への自信に繋がっている。そんな息子の頼もしい姿を見ながら、この小さな「できた」の積み重ねを、焦らず丁寧に育てていきたいと感じています。

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試験登校で見えた「4時間の壁」と、主治医との見解のズレ

家庭内での成長に喜びを感じる一方で、「学校」という社会の枠組みに入ったとき、私たち親子は新たな現実と向き合うことになりました。

現在、息子は1時間目から3時間目までの試験登校を頑張っています。

授業中はしっかり集中して受けることができているのですが、問題はそのあとでした。病院につくやいなや「もう無理!だっこして!」と叫ぶ息子。毎回、病棟にたどりつく頃には、糸が切れたようにぐったりと疲れ果てています。

この様子を見て、院内学級の先生が伝えてくれた見立ては、非常に腑に落ちるものでした。

「今の息子くんにとって、4時間がスタミナの限界だと思います。だから、院内学級でも4時間までにとどめているんです」

守られた環境である院内学級でさえ4時間が限界なのであれば、刺激も人数も圧倒的に多い地域の普通の学校では、よりハードルが高くなるのは目に見えています。 だからこそ、私は主治医の前で、自分の言葉でしっかりと今の本音を伝えました。

「息子の限界が4時間なのだとしたら、無理に学校と放課後等デイサービスを併用させるより、まずは無理のない時間数で、毎日(もしくは週3〜4日)コンスタントに通えることを目標にしたいです」と。

まずは「息子のスタミナに合わせた、持続可能な方法」を選びたい。
それが母親としての私の願いでした。

主治医の先生が心配してくれたこと

しかし、主治医の先生の見解はすこし違っていました。

先生が懸念されていたのは「最初から目標を低く設定してしまうことで、本人のモチベーションが下がってしまうのではないか」ということ。限界を4時間と決めてしまえば、そこに合わせて頑張れるはずの底力さえも発揮できなくなるかもしれない、という考えのようでした。

だからこそ試験登校では、できるだけ時間数を増やす方向でシフトしていきたい、という思いを主治医は持たれていました。

そしてもう一つ、先生が強く心配してくださっていたのが「母である、わたし自身のこと」でした。

「お母さんと一緒にいる時間が長くなることで、お母さんがしんどくなって潰れてしまうのが一番心配です。お母さんが働く時間を作ること、息子くんに学校やデイを頑張ってもらうことで、お母さんが自分の時間を確保できると思うんです。」

その言葉を聞いたとき、胸がギュッとなりました。先生は決して、息子に無理をさせたいわけではない。わたしの限界を心配して「時間数を増やそう」と言ってくれていたのです。

息子の体力を最優先に考え、現実的なラインを見極めようとする院内学級の先生の言葉。
息子の可能性を信じ、同時にわたしの心身が壊れるのを防ごうとしてくれる主治医の言葉。

どちらの意見も、子どもと私を思っての「100%の正論」です。

だからこそ、その狭間に立たされる親としては、激しく心が揺れ動きます。学校へ行かせること、デイへ繋ぐこと、自分が働くこと、そして息子の体力の限界。これら全ての意見をどう組み合わせれば誰も倒れずにいられるのか、正解のない問いに今も悩み続けています。

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「母の限界」は、息子に伝わらない。ショートステイをめぐる葛藤

主治医の先生が心配してくれた「お母さんが潰れないように」という問題は、我が家にとって今まさに直面している大きな課題でもあります。

先日、SSW(スクールソーシャルワーカー)さんに、核心を突くような質問をされました。

「これから先、一緒に暮らしていくために、こうなってほしいという思いはありますか?」

その問いに対して、私の頭に浮かんだのは、ごくシンプルな、けれど今のわたしにとっては贅沢な願いでした。 「私自身が、1人になれる時間(お留守番のような時間)ができるなら、きっと大丈夫だと思います」それが、私の偽りのない本心でした。

でも、現実的に考えて、留守番が1分もできない今の息子を置いて、私が外出することは難しい。

だからこそ、現実的な選択肢として「福祉サービスであるショートステイ(短期入所)が使えるようになるといいな」という答えに行き着きました。

「ママと離れたくない」息子の涙

しかし、ここにもまた、簡単には超えられないハードルがあります。

思い出すのは、前回の退院時の苦い記憶です。

「お母さんもときどき疲れちゃうことがあるから、退院したら、ショートステイというお泊まりの場所に練習で行ってほしいんだ」

病院のSW(ソーシャルワーカー)さんが、退院直前の息子に、絵カードを使いながら、とても丁寧に説明してくれたのです。

その説明を聞いた瞬間。
息子は大泣きして、激しく拒否しました。

「ママと離れたくない」「知らない場所に置いていかれるかもしれない」 そんな恐怖でいっぱいになった息子の心を想うと、私の胸も締め付けられるようでした。

8歳の息子にとって、「お母さんが休まないと倒れてしまう」とか、「しんどくて限界を迎えている」という概念は、まだどうしても理解ができないようです。彼に見えているのは、大好きなママの姿だけであり、その裏側にあるママの心身のすり減りまでは、まだ想像が届きません。

息子に、悪気は一切ないのです。ただママが大好きで、一緒にいたいだけ。 それなのに、親である私は「自分の限界を守るために、あなたと離れる時間が必要だ」と願ってしまう。

このレスパイトをめぐる葛藤は、どうしたらいいのでしょうか。親の心身を守るための公的なサポートは存在するのに、子ども本人の心がそれを受け入れられないとき、一体どうやって折り合いをつければいいのでしょう。

「母の限界」という目に見えない境界線を、子どもに傷をつけずに理解してもらうことの難しさ。
今も常に、ひしひしと感じています。

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おわりに

試験登校の壁、主治医との目標のズレ、レスパイトの難しさ。
課題を並べると、頭を抱えてしまいそうになります。

でも、ふと目の前の息子に視線を戻せば、そこには確かに「今を一生懸命がんばっている姿」がありました。

スタミナの限界はありつつも、試験登校中の授業は、しっかりと受けることができています。学校の準備を一緒にやろうとしてくれること、「3回やめて」の約束を守ろうと踏みとどまること。それら全てが、息子の精一杯の挑戦であり、成長であり、確実な一歩なのです。

子育て、特に発達の凸凹があるわが子との日々は、まさに「1歩進んで、2歩下がる」ことの繰り返し。昨日できたことが今日できないこともあれば、超えられないと思っていた壁の前に立ち尽くすこともあります。

でも、それでいい。息子なりに成長してくれたらいい。
今は焦らずに、息子のペースに伴走して、じっくり見守っていきたいと思っています。

親である私が倒れないように自分の足元を固めつつ、息子が「できた!」という達成感を一つずつ積み重ねていけるように。わたしたちなりの歩みで、この「4時間の壁」を少しずつ、味方に変えていければいいなと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

同じように日々葛藤しながら頑張るお父さん、お母さんへ。
今日もお互い、本当にお疲れ様でした。


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